「結局、無理矢理成仏させる羽目になるのか・・・」

ゼリー状の物体から介抱された正太郎はそう言いながらみくの所へ向かう

「お姉ちゃん、大丈夫?」

かすかに呼吸はしているがみくに反応はない

「霊力を吸われ過ぎたのかも・・・このままじゃ・・・」

考える正太郎

「こうなったらお姉ちゃんに直接霊力を注ぐしかないけど・・・」

その言葉のあと少し悩み

「ごめん、お姉ちゃん」

正太郎はそう言ってみくの顔を上げ口づけをした

 

(何や?真っ暗で何も見えへんで・・・)

(ああ、そっか。アイツに飲み込まれたんやったな・・・)

(ウチこのまま死ぬんやろうか・・・)

(いや、正太郎を助けな・・・)

(でも体はちっとも言う事きかへんし・・・)

(それに・・・)

『お姉ちゃん』

(正太郎の声が聞こえる・・・)

『大丈夫?お姉ちゃん』

(大丈夫とは言われへんな・・・)

『しっかりして、お姉ちゃん』

(ん?何か体の芯から暖まってきた・・・)

『もう大丈夫だから』

(大丈夫?正太郎がそう言うとウチもそんな気になってきた)

 

「お姉ちゃん」

正太郎が叫んでいるとみくは目を覚ます

「ん、う〜ん。アレ?ウチまだ生きとる」

「良かった〜っ。一時はどうなるかと思ったよ」

虚ろながらみくは周りを見る

「アイツどないしたん?」

「とりあえず成仏したよ」

「そか・・・」

静かにそう呟いてみくは下を向く

「結局、ウチは足手纏いやったな」

「そんな事無いよ。お姉ちゃんのお陰で何とか・・・」

正太郎はそう言いながらみくの方に倒れ込んだ

「正太郎!」

「いや、ちょっと霊力を使いすぎたからクタクタでちょっと動けそうにないよ」

「それならウチがおぶったる」

そう言ってみくは立ち上がり正太郎に背を向ける

「でもお姉ちゃんもくたびれてるんじゃないの?」

正太郎の言葉にみくは自分の体を確かめる

「・・・いや、何でか知らんけど来た時よりも元気になっとるから大丈夫やで」

「それじゃあ、お言葉に甘えるよ」

正太郎はみくの背中に負ぶさった

その後みくはトンネルを抜け自転車に乗り家路に着いた

 

「じゃあ、与え過ぎたんだ」

結局、正太郎の部屋までおぶる事になったみくに正太郎は言った

「何の話や?」

みくがそう言うと正太郎は顔を真っ赤にして

「あの・・・その・・・お姉ちゃんに一つ謝らなきゃならない事があるんだよ」

「ウチに謝る事?」

「うん。さっきお姉ちゃんの霊力が尽きて死にそうになっていたから霊力を分けたんだけど・・・」

「それやったら別に謝る必要はないやんか?」

「一番効率が良いのは体内に直接送る事だったから口づけしたんだよ」

その言葉を聞いた瞬間みくは止まった

「口づけ・・・と言う事はキスしたんか?」

「うん」

(ウチが寝てる間に正太郎がウチにキス!)

「もしお姉ちゃんが初めてのキスを好きな人の為に取っておいたのなら申し訳ないと思うし・・・」

(ウチのファーストキスの相手が正太郎。しかも正太郎から・・・)

「黙っておこうと思ったんだけど隠し事をしてギクシャクするのも嫌だから・・・やっぱり怒ってる?」

(何か事故に近いけどウチと正太郎がキスした事に変わりない)

「お姉ちゃん?」

「え?あ、うん。何や?」

たどたどしい返事をするみく

「その・・・ごめんなさい」

「ええねん。だってそうするしか無かったんやろ?」

「許してくれるの?」

「当然やん」

「ありがとう。お姉ちゃん」

部屋の前に着いたので正太郎を降ろす

「おやすみなさい、お姉ちゃん」

「おやすみ」

正太郎が部屋に入ったあとみくは大喜びで自分の部屋に向かった

部屋に帰ったみくはさくらに今日あった事を喋らずには居られなかった

しかし話のあとさくらは言った

「せっかくのチャンスだったのに・・・」

「何がや?」

「どうせなら『ウチのファーストキス奪ったんやから責任取って結婚してーな』ぐらい言えば良かったのに」

「!!!!!」

その言葉でみくは凹む

「そんな手があったんか・・・」

「まぁ、そんなせこい事しないのがお姉ちゃんの良い所だと思うけど」

「今から言いに行くっていうのは・・・」

「許したんだから今更言っても意味無いよ」

「今度似たような事があったら試しに言ってみれば?(現状からしてそこまで思考が回らないと思うけど)」

「今度って何時や〜」

みくはそう言って布団に入った

 

「何も考えずに来たけどどないしよ・・・」

翌朝、みくは正太郎の部屋の前に居た

すると中から鈴音が現れた

「どうしたの?みくちゃん」

「え?ああ、えーっと・・・そや、正太郎は起きとるんか?」

「いえ、まだ寝てますよ。昨晩は相当無茶をしたのでしょう」

「やっぱりウチのせいか・・・」

みくは下を向いてそう呟く

「駄目ですよ。貴女がそう思っていると多分あの子はそれ以上に自分のせいだと考えてしまう。そういう子なんです」

「それやったら・・・」

「前を向く事です。昨日が駄目なら今日、今日が駄目なら明日。貴方達が立ち止まるのにはまだ早すぎるのだから」

「ママさん」

「さ、分かったら正太郎の顔でも見たら?でも襲っちゃ駄目よ」

「襲わへんわ!」

「そう、それでこそみくちゃんよ」

そう言って鈴音は階段を下りていった

「正太郎、入るで〜」

みくは正太郎の部屋のドアを開ける

そこは何処か懐かしい空間が広がっていた

そして正太郎が寝ているベッドに近寄り腰を下ろす

「ウチ決めたんや」

みくは寝ている正太郎の顔を眺めながら言った

「ウチもっともっと修行していつか正太郎を守れるような立派な巫女になるで」

正太郎は静かに眠っている

言い終わったあとみくは正太郎の顔を眺めていた

「正太郎の顔ってじっくり見るとママさんそっくりやな。目も鼻も口も・・・」

そこで言葉は止まる

(口・・・正太郎の口・・・昨日ウチにキスした口・・・)

そう考えるとみくの顔は真っ赤になっていった

(昨日は事故でキスしたけどいつかはお互いに愛し合って合意の上で・・・)

 

「お姉ちゃん・・・いや、今はみくと呼ぶのが一番だね」

「何や?正太郎」

「こうやっているとみくと一緒になれて本当に良かったと思うよ」

「ウチもや」

「好きだよ、みく」

その言葉にみくは目を瞑る

数秒後、唇に暖かい体温を感じる

そして温もりが消える

「ウチも大好きやで」

みくは正太郎を抱きしめ口づけする

 

「うにゃ〜」

みくはそんな想像をしながら悶えていた

「あの・・・お姉ちゃん?」

起きた正太郎はベッドの隣にいるみくを見て疑問を感じていた

「はわっ、しょ、正太郎!何時起きたんや?」

「え?今起きた所だけど・・・」

「そか、それなら良いんや。おはよう、正太郎」

「おはよう。それにしてもどうして此処にいるの、お姉ちゃん?」

「ああ、いつもなら起きる時間なのに起きてこーへんかったから心配で・・・」

「ありがとう、お姉ちゃん。でも一晩寝たからもう大丈夫だよ」

そう言って体を動かしてみせる

「そか、それならもう心配いらへんな」

みくはそう言ったあともそのまま座っていた

「あの・・・お姉ちゃん」

「何や?」

「僕、着替えたいんだけど」

「そ、そうやな。ママさんが朝食作って待っとるから早う着替えなな」

みくは慌てて部屋を出ていった

正太郎はパジャマの上着を脱いで自分の体を確かめる

「一晩寝ただけで傷すらない。これも力の一部だと言う事か・・・」

そう言ったあと黙々と着替えを済ます

「折角与えられた力なんだからもっと人の為に役立てられるようにならないと」

正太郎はドアを開け階段を下りる

「今日は一日修行するんや」

「私はデータ収集しないと・・・」

階段下からはみくとさくらが喋りながら上がってきていた

そして階段の踊り場で正太郎とみくはぶつかった

「うわっ」

「正太郎」

正太郎はバランスを崩しみくは正太郎を庇い倒れ込む

「だ、大丈夫か?正太郎」

「うん。大丈・・・!」

正太郎はみくの胸を思いっきり掴んでいた

「ご、ごめんなさい」

「べ、別に事故なんやから謝らんでもええで」

その様子を見ていたさくらは言う

「思った通りそこまで思考は回ってないわね」

「え?何の話」

「お兄ちゃんには内緒。それよりも早く朝食食べないと冷めちゃうよ」

「うん、そうするよ」

正太郎は元気に階段を下りていった